【韓察日報】ウクライナのゼレンスキー大統領が23日(現地時間)、国連演説で拘束した北朝鮮軍捕虜2人を韓国へ移送したと公表したことを巡り、韓国政界で波紋が広がっている。チャンネルAなどの報道によると、韓国大統領府高官は24日(現地時間)、外交ルートを通じて演説内で捕虜に言及する可能性を事前に把握していたと明かした。同高官は公表に遺憾の意を示しつつ、非公開での静かな処理こそが人道主義の原則に沿うものだと説明したが、野党側は政府の対応を「北朝鮮への過剰な配慮による隠蔽」と激しく批判している。
■演説の事前把握と「静かな移送」の原則
大統領府高官は、李在明(イ・ジェミョン)大統領のメキシコ国賓訪問に同行中、現地で記者団に対し「政府が何も知らない状態で演説を聞いたわけではない」と語り、事前連絡を受けていた状況を説明した。ただし伝わっていた内容は明確ではなく、単に捕虜に関する言及があるという程度にとどまっていたと述べた。
同関係者は捕虜移送の全般的なプロセスについて「本人たちの自由意思、国内法および国際法、人道主義の原則に従い、静かに対処すべきだ」と強調した。非公開で静かに処理する方針についてはウクライナ側とも事前の了解があったとされるが、ゼレンスキー大統領が従来の了解に反して演説で公表したことに対し、李大統領は「残念だ」と不快感を示したという。大統領府は、一部メディアでの面会やインタビュー報道が事態を難航させ、円満な移送に反対する動きを刺激したと分析している。
■野党による「隠蔽」批判と外交的影響への懸念
一方で、政権の対応に対して野党からは激しい反発の声が上がっている。TV朝鮮によると、脱北者の経歴を持つ野党「国民の力」のパク・チュングォン首席報道官は、李在明政権が北朝鮮軍捕虜2人の極秘移送を徹底的に隠蔽し、「北朝鮮の顔色を伺う対応」に終始したと批判した。同報道官は、外国首脳が公表するまで政府が知らぬふりを決め込み、入国の事実すら堂々と明らかにできない姿勢を「卑怯だ」と指摘した上で、青年捕虜の移送に至る全経緯を国民に公開するよう求めた。
さらにパク首席報道官は、野党による正当な指摘に対して「殺人者」や「売国奴」といった極端な表現を用いて反発した李大統領の対応を強く批判した。あわせて、今回の問題が米国との70年にわたる血盟関係や外交的信頼を損なったと主張し、その信頼をいかに回復するのかを明確に示すよう迫っている。
これに対し大統領府側は、野党からの批判について「人道・人権の原則を遵守しただけであり、それ以上の政治的考慮はなかった」と反論した。どの国においても捕虜や脱北者の移送を公然と行う例はないとし、裏工作や国民への欺瞞とする見方は事実無根であると主張している。
【編集長の韓察眼】
ゼレンスキー氏の公表により、捕虜2人が極秘裏に北朝鮮へ送還される可能性は極めて低くなった格好だ。野党を「殺人者」「売国奴」と強硬に批判する李政権の姿勢は、北への「人道主義」と鮮やかな対照をなす。捕虜移送に至る全経緯の解明とともに、今後の対北朝鮮政策を注視したい。

