【韓察日報】ウクライナのゼレンスキー大統領が国連総会の演説で、捕虜となった北朝鮮軍兵士2人を韓国へ移送したと電撃公表したことを巡り、韓国政界および韓・ウクライナ間で波紋が広がっている。YTNなどの報道によると、韓国政府は「静かに処理する非公開の合意があった」としてウクライナ側の公表に遺憾を表明したものの、ウクライナ側が合意の存在を否定したことで真相を巡る攻防へ発展した。韓国内でも移送の非公開化を巡り与野党が激しく対立している。
■ゼレンスキー氏の公表と韓国政府の遺憾表明
ゼレンスキー大統領は今月23日、国連総会演説の場で「最近、北朝鮮軍の戦争捕虜2人を韓国へ送った。うち1人は捕虜になることに気づくと命を絶とうとした」と明かした。
ウクライナ側が先行して公表したことを受け、韓国の李在明(イ・ジェミョン)大統領はSNSを通じて「ウクライナが非公開の合意を破って公表した。非常に残念だ」と表明した。韓国大統領府の高官も、捕虜本人の意向や国内法・国際法、人道主義の原則に基づき非公開で静かに処理する事前了解が両国間でなされていたと説明し、「一貫した原則に従って対応するのが政府の立場だ」と強調した。
■「秘密合意はない」ウクライナ側の反論と政敵の介入
しかし、MBNの報道によると、ウクライナ側からは韓国政府の主張を否定する声が上がっている。
ゼレンスキー氏の最大ライバルとされるザルジニー駐英ウクライナ大使側は、李大統領のSNS投稿を引用しながら「非公開合意への違反であり、政治的なパフォーマンスだ」とゼレンスキー氏を批判した。これに対しウクライナ大統領府の広報担当補佐官は「非公開の合意は事実ではない」「特定の捕虜がどこへ送られるかを隠すのは間違いだ」と即座に反論した。ライバルからの攻撃に応戦する過程で、ウクライナ政府が韓国政府の「秘密合意」という立場を公式に否定する形となった。
これに対し、韓国大統領府関係者は「相手国の情報筋の発言に一つひとつ答えるのは適切ではない」と述べるにとどめ、直接のコメントを避けている。
■韓国内で与野党が激突「隠蔽」対「安全考慮」
一連の経緯を受け、韓国国内では与野党による攻防が過熱している。
韓国KBSの報道によると、野党「国民の力」は、政府が北朝鮮や金正恩(キム・ジョンウン)総書記の顔色をうかがって隠蔽しようとしたと主張した。「すでに公開された情報を隠す行為は国際的な恥さらしを招く」と述べ、ウクライナ側が秘密保持を約束していなかった点を挙げて政府の対応を強く批判した。
一方、与党「共に民主党」は、移送の非公開処理について亡命者の安全確保と国益を最優先した極めて常識的な措置だと反論した。野党に対し安保上の不安を煽る陰謀論をやめるよう求め、政府の対応を擁護した。
梨花女子大学のパク・ウォンゴン教授は「公表の有無にかかわらず、捕虜が無事に韓国へ到着したという事実のみで第一段階の目標は達成された」と分析するが、移送の公表経緯と合意の有無を巡る論争は当分続く見込みだ。
【編集長の韓察眼】
両国首脳の思惑のズレは、外交合意の有無を巡る「言った言わない」の水掛け論に発展した。SNSを通じた李大統領の発言は、今年1月のカンボジア、4月のイスラエルに対する批判でも同様に物議を醸している。首脳による情報発信が国益に見合う適切な運用となっているか、今後の展開を注視したい。


