【韓察日報】朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の妻、陸英修(ユク・ヨンス)夫人銃撃事件(文世光事件)を扱った映画『暗殺者(たち)』をめぐり、出演俳優に対する過激な威嚇行為や政治的論争が拡大している。9月末の国会では関連質疑への答弁を避けていた崔輝永(チェ・フィヨン)文化体育観光相だが、約1週間後の10月5日、一部保守団体の過激なデモや脅迫に対しては断固反対の姿勢を示した。MBNなどの報道によると、チェ氏は警察庁などの関係当局へ安全対策および違法行為に対する厳正な法執行を要請したと明かした。チェ氏は創作者の身の安全に対する脅威を「民主主義の破壊だ」と強く批判する一方、作品の上映中止要求に対しては「政府が行政力で裁定を下すのは危険な事前検閲にあたる」と主張した。
■国会での衝突と文化体育観光相の沈黙
映画『暗殺者(たち)』をめぐる対立は政界で表面化していた。韓国KBSは、先月28日の国会法制司法委員会において、野党「国民の力」の金泰圭(キム・テギュ)議員がチェ氏に対し同作や歴史認識に関する質疑を行い、激しく衝突したと報じている。
キム議員は「陸英修夫人を暗殺したのは文世光(ムン・セグァン)氏で間違いないか」と質した。しかし、チェ氏は「質問の意図が分からない」「文脈に沿った質問をしてほしい」として回答を避け、明言を避けていた。その後、与党「共に民主党」の徐瑛教(ソ・ヨンギョ)委員会長が政治的な質問であるとして質疑を打ち切ったことで、激しい論争を残したまま審議が終了した。
■抗議デモ激化でついに口を開いたチェ氏
先月23日に公開された同作は、当時の日本との外交関係などを根拠に、中央情報部(KCIA)の「上層部」が事件の黒幕であった可能性を示す仮説を描いたことで歴史歪曲をめぐる論争が起きている。国会での衝突から約1週間後の今月4日には、保守系団体の会員らが主演を務めた俳優ユ・ヘジンの自宅前で集会を開き、映画の上映中止や制作陣・俳優の謝罪を要求する事態に発展した。
これに対し、国会では沈黙を守っていたチェ氏は5日、自身のSNSを通じて「映画に対する評価は自由だが、自宅前に押し寄せて日常生活を侵害し身の安全を脅かす事態は容認できない」と指摘した。その上で、「作品の内容に問題があるならば、上映後に民事・刑事上の司法手続きを通じ判断を求めればよい」とし、歴史的解釈に対する議論自体は民主社会において健全なことだと述べた。
また、ユ・ヘジンの所属事務所も5日、無分別な人身攻撃や私生活の侵害、身辺を脅かす一切の行為に対して厳重に対応する立場を表明している。
【編集長の韓察眼】
スタバ応援歌騒動で事実上の検閲、不買運動を展開した政権・与党が、本件では「上映後」の司法手続きこそ民主主義だと主張する格好だ。国会で「暗殺犯は文世光か」との問答すら避け過激な抗議活動の口実を与えた長官の責任は免れまい。今後も表現の自由を巡るチェ氏ら政権・与党の二重基準を注視したい。


