【韓察日報】ウクライナ戦線で拘束された北朝鮮軍の捕虜2人が韓国に移送されたものの、ウクライナのゼレンスキー大統領が23日(現地時間)に国連総会演説でこの事実を公表したことを巡り、韓国政府内に波紋が広がっている。韓国SBSなどの報道によると、両国は当事者の安全やデリケートな南北関係に配慮し、非公開で交渉を進めてきたが、異例の移送劇は到着直後に国際舞台で暴露される形となった。これに対し李在明(イ・ジェミョン)大統領は強い遺憾の意を表明し、対立する保守野党との政争にも火がついている。
■水面下の極秘交渉と「ローキー戦略」の崩壊
捕虜2人の韓国行きは、当事者の亡命意思を確認した韓国政府がウクライナ側と数十回に及ぶ水面下の交渉を重ねた末に実現した。今年7月の首脳会談で李大統領とゼレンスキー大統領は、当事者の自由意思と人道主義原則に基づく解決に合意した。YTNの報じるところでは、両国は6月頃に最終合意に達し、公表から3~4日前に実際の移送が行われたとされる。
ウクライナ側は交渉過程で韓国側に「セキュリティへの留意」を要請していたが、ゼレンスキー大統領は捕虜が韓国に到着してからわずか数日後、国連総会の演説でこの事実を世界に向けて公表した。ゼレンスキー氏は昨年1月に北朝鮮軍捕虜を拘束した際もSNSで即座に発表しており、今回の独断公表に対し韓国政府は当惑を隠せない。政府は捕虜やその家族の安全を考慮し、入国事実を公式に発表も否定もしない「ローキー戦略」で臨む方針だったが、ウクライナ側の予期せぬ行動により機密保持の枠組みは瓦解した。
■李大統領の猛反発と野党「国民の力」による批判
この事態を受け、李大統領は24日、非公開合意を無視して公表に踏み切ったウクライナ側に強い遺憾を表明した。MBNによると、李大統領は「外交・安全保障および朝鮮半島情勢に重大な影響を及ぼす非常に繊細な問題だ」と強調した。非公開合意違反を批判するのは当然の権利であるとし、国益や生命を犠牲にして成果の公開を求める姿勢を「残忍で無責任だ」と突っぱねた。また、国政支持率の回復といった内部の思惑から公表を要求するような主張を牽制し、すべての戦争が早期に終結することを切に願うと述べた。
一方、昨年ウクライナで捕虜と直接面談した野党「国民の力」のユ・ヨンウォン議員は24日に記者会見を開き、政府の対応を糾弾した。ユ議員は「重大な事案が相手国首脳の口から先に明かされた」と指摘し、政府がより主導的かつ積極的に交渉へ臨むべきだったと批判した。その上で、安全が確保され次第、北朝鮮軍のウクライナ参戦の実情を韓国国民に伝える機会を迅速に設けるよう求めた。
■前例なき移送が与える南北関係への波紋
海外の戦場で拘束された北朝鮮軍捕虜が韓国に移送されたケースは過去に前例がない。韓国政府は憲法上、北朝鮮住民も自国民とみなす原則に基づき、移送要請があれば全員を受け入れる立場を堅持している。現時点で北朝鮮側からの特段の反応は見られないものの、今回の移送と公表が今後の南北関係にどのような変化をもたらすか、重大な関心が集まっている。
【編集長の韓察眼】
北朝鮮はロシア、韓国の脱北者団体は米国を介しそれぞれ捕虜引き渡しに奔走していた経緯がある。今回の合意破綻は、戦果アピールを狙うウクライナと対北摩擦を避けたい韓国の思惑のズレにとどまるのか疑問が残る。北朝鮮による今後の反発の度合いに加え、現地に留まる他の捕虜交渉へ及ぼす影響を注視したい。

