【韓察日報】朴正煕(パク・チョンヒ)元大統領の妻、陸英修(ユク・ヨンス)夫人銃撃事件(文世光事件)を扱った映画『暗殺者(たち)』の制作陣および出演陣が、週末の舞台挨拶や釜山国際映画祭での公式日程を全面中止した。朝鮮日報などの報道によると、文世光以外の共犯の存在を示唆するなど、作品をめぐる歴史歪曲論争が収まらない中、出演俳優や関係者への負担増大や劇場周辺への影響を考慮して下した決定だという。本件をめぐっては、野党議員による海外映画祭への抗議書簡送付や、野党の動きに対する与党の批判など、政界にも大きな波紋が広がっている。
■映画祭・舞台挨拶日程の全面取り消し
『暗殺者(たち)』の制作会社ハイブメディアコープは2日、公開2週目の舞台挨拶中止を発表し、予定されていた10月3日~5日の日程を実施しない方針を固めた。同社は「作品を巡る状況が出演陣や制作陣に大きな負担となっている」とし、参加者の保護や観客・劇場関係者への影響を考慮した結果だと説明した。
これに伴い、10月6日から15日まで開催される第31回釜山国際映画祭での関連日程もすべて取り消された。開幕式への出席や野外ステージでの挨拶をはじめ、主演俳優イ・ミンホのトークイベントも中止となり、チケットの一斉払い戻し手続きが進められている。映画祭側も制作会社の要請を受けて日程中止を発表し、観客に理解を求めた。これに対し、ファンからは「国際映画祭に対する検閲だ」と不満を募らせる声がある一方、「当然の決定だ」と支持する意見も上がり、評価が分かれている。
■野党議員が海外映画祭に選定撤回を求める抗議書簡
作品への批判が強まる中、野党「国民の力」のチュ・ジンウ(朱晋佑)議員は、同作をオープニング作品に選定したシンガポール国際映画祭に対し、選定の見直しを求める抗議書簡を送付したとチャンネルAは報じている。
チュ議員は自身のSNSを通じ、「大韓民国に偉大な業績を残した朴正煕大統領を犯罪者のように描くことは国の威信を損なう行為だ」と主張した。書簡内では映画祭の独立性に配慮しつつも、「実在する犠牲者や遺族がいる中で、その悲劇を覆い隠すような作品を国際映画祭の顔として掲げるべきではない」と強調した。国民の力の議員グループチャットでもこの動きが共有され、党を挙げた共同署名へ発展する気配を見せている。
■与党は「芸術を踏みにじる政治的攻撃」と猛反発
一方で、与党「共に民主党」からは野党側の動きを過度な政治的攻撃だと牽制する声が上がっている。MBNによると、民主党のメディア公共性強化TF団長を務めるチェ・ミンヒ最高委員は2日の党最高委員会議で、イ・ミンホのイベント中止に言及し「世界的な恥さらしだ」と強く批判した。
チェ最高委員は、米国のケネディ大統領暗殺を扱った映画『JFK』の例を引き合いに出し、「一部の歴史論争を理由に俳優を嘲笑したり作品を踏みにじったりする対応は度を越している」と反論した。さらに、先月30日にも「国民の力の政治的攻撃は度が過ぎている。映画は映画として評価し、韓国映画の再起の芽を摘むような真似はやめるべきだ」と自制を促していた経緯を強調し、野党側の姿勢を糾弾した。
【編集長の韓察眼】
韓国世論はすでに歴史歪曲とみる向きが大半を占めており、制作側の「フィクション」という主張は共感を得ていない。出演俳優らを起用した商品への不買運動が展開され、ネット上では『自殺者(たち)』や『ファーストレディー(たち)』といったミームが続出する事態となっている。今後も本件に関する世論の動向に注視したい。

