脱北漁民送還で一転懲役刑 文政権幹部ら反発「凶悪犯の追放、政治的起訴だ」

📌 この記事の3行要約
  • 脱北漁民強制送還を巡り、文政権元幹部に一審を覆し懲役刑の判決
  • 司法が基本権侵害と断じる一方、被告側は凶悪犯追放と政治起訴を主張
  • 舞台は最高裁へ。安保上の統治裁量と憲法の基本権保障の限界が焦点

【韓察日報】2019年に発生した脱北漁民の強制送還事件をめぐり、職権濫用などの罪に問われた文在寅政権下の安全保障幹部に対し、ソウル高裁が一審判決を覆して懲役刑の執行猶予判決を言い渡した。TV朝鮮などの報道によると、ソウル高裁は21日、鄭義溶(チョン・ウィヨン)元国家安保室長と徐薫(ソ・フン)元国家情報院長にそれぞれ懲役1年6月・執行猶予3年、金錬鉄(キム・ヨンチョル)元統一相に懲役1年・執行猶予2年を言い渡した。一審の宣告猶予(有罪としつつ判決の言い渡しを保留する処分)から一転して刑事処罰の対象と断じられた被告側は22日、「重大犯罪者に対する追放措置だった」と判決に強く反発し、直ちに最高裁へ上告する方針を明かした。

■「憲法・国際法違反は明白」一審の宣告猶予を破棄
 文在寅政権の安全保障担当高官だった被告らは、2019年11月、日本海を船で南下して亡命の意思を表明した北朝鮮の漁民2人を、法的根拠なく強制的に北朝鮮へ送還したとして起訴された。

 一審のソウル地裁は、被告らの行為を有罪と認めつつも、南北分断以降に同様の事態を想定した法制度が未整備であったという「制度的空白」を酌量し、懲役刑の言い渡しを猶予する寛大な判断を下していた。

 しかし、控訴審の判断は厳格を極めた。ソウル高裁は「大韓民国憲法は北朝鮮を自国領土とみなし、北朝鮮住民も国民として扱う」という原則を再確認した上で、「強制送還によって北朝鮮漁民が裁判を受ける権利などの基本権を著しく侵害した」と指摘。「憲法、国内法、国際法のすべてに違反したことは明白であり、刑事処罰の対象となる」と断じた。

 MBNの報道によると、ソウル高裁は実務担当者から「法的根拠がなく慎重な検討が必要だ」との意見が出ていたにもかかわらず、拿捕からわずか2日後に強制送還を決定した事実を重視した。強制送還の執行に動員された中央合同情報調査チームや警察特殊部隊、統一部職員らに対し、義務のない業務を行わせた職権濫用の容疑についても有罪と認定した。ただし、前例のない極めて異例の状況下で合理的な判断を下せなかった事情などを考慮し、実刑ではなく執行猶予を適用したと説明した。

 なお、共犯として在宅起訴されていた盧英敏(ノ・ヨンミン)元大統領秘書室長については、強制送還の意思決定に直接関与したとは認め難いとして、一審に続き無罪が言い渡された。

■被告側は反発「凶悪犯の追放措置、政治的起訴だ」
 判決を受け、鄭元室長、徐元院長、金元統一相の3人は22日に共同声明を発表し、当時の措置の正当性を改めて主張した。

 MBNによると、3人は声明で「本件の本質は単なる脱北者の強制送還ではなく、重大な人道に対する罪を犯して韓国側へ逃走した犯罪者に対する追放措置だ」と強調。「犯罪容疑の重大性や逃走の経緯、亡命の意思表明の真意に対する疑念を無視し、通常の脱北者の亡命事例と同列に扱うことはできない」と反論した。

 さらに被告らは、尹錫悦政権の発足以降、政治的意図に基づいて文政権の安保政策に対する集中的な捜査と起訴が行われた結果、本件が刑事事件へと発展したと批判し、裁判の独立性と手続き的公正性を担保すべきだと訴えた。

 安全保障や高度な統治行為としての裁量を主張する被告側と、法治主義と国民の基本権保障を優先する司法判断が真っ向から対立する中、最終的な決着は最高裁の判断に委ねられる見込みだ。

【編集長の韓察眼】
南北対話の進展を最優先した文政権の安保方針と、憲法が保障する基本権との摩擦が生んだ制度上の歪みといえる。高度な統治行為としての裁量を主張する被告側に対し、手続き的正義を重視して判断を厳格化した司法の姿勢に、最高裁長官の弾劾を目指す与党陣営は警戒感を強める。政権交代に伴う安保判断への司法判断による清算をめぐり、最高裁が裁量の限界線をどう引くかが今後の焦点となる。

出典: TV朝鮮 / MBN


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