【韓察日報】韓米関税交渉で実務の指揮を執ってきた産業通商部のヨ・ハング(呂翰九)通商交渉本部長が、15日未明に突然更迭された。韓国SBSなどの報道によると、李在明大統領は同日午前0時をもってヨ本部長を職権免職としたが、大統領室および産業通商部は具体的な理由を公表していない。重大な局面を迎えている対米通商交渉への支障が強く懸念されている。
■深夜0時の電撃更迭と交錯する憶測
政務職公務員の身分を一方的に剥奪する職権免職は極めて異例の措置だ。ヨ前本部長は文在寅政権で産業部の通商政策局長や通商交渉本部長を歴任し、李在明政権の発足に伴い再び同職に起用された。これまで韓米関税交渉を主導してきたほか、米貿易法301条に基づく調査やクーパン問題といったデリケートな通商懸案を担当してきた人物である。
突然の更迭理由について、官界では韓米交渉とは無関係であるとの見解が出ている一方、前本部長側は虚偽の主張に対して法的対応を検討する構えを見せている。産業部は「人事権者による人事措置に伴い、通商懸案に支障が生じないよう万全を期す」と発表した。
■200億ドル規模の対米投資協議と関税上限の行方
現在、対米通商交渉は緊張感を増している。韓国は昨年、3,500億ドル規模の対米投資を含む貿易合意を通じて関税を25%から15%へ引き下げ、造船分野に1,500億ドルを割り当てた。
現在残る200億ドルの投資履行案について両国が協議を重ねる中、韓国KBSはキム・ジョングァン(金正官)産業通商部長官が16日、土壇場で様々な争点が浮上したため実務的な整理が必要だと明かし、早ければ8月末の発表を目指して解決を図る意向を示したと報じている。トランプ米大統領が投資のペースを速めるよう圧力をかけている点についても、今年初めから言及があり共通認識が形成されている状況だ。
さらに米国は、強制労働製品の使用に伴う12.5%の関税賦課に続き、過剰生産に関わる関税賦課に向けた調査を進めている。韓国政府はこれら2つの関税の合計が15%を超えないよう交渉を続けている。過剰生産調査の結果発表後も関税上限(15%)が守られるという共通認識は存在するものの、予断を許さない展開が続く。なお、KBSによると、キム長官の今回の訪米目的にヨ前本部長の更迭問題に関する説明は含まれていないという。
通商トップの突然の空席が、対米交渉の最終妥結にどのような影響を及ぼすか、今後の推移が注目される。
【編集長の韓察眼】
対米通商協議が最終局面を迎える中での更迭劇は、政権内部の意思決定の乱れか政務リスク回避かを巡り波紋を呼んでいる。定例的な人事交代とは異なり、200億ドル規模の投資履行や関税上限維持といった米国の強硬姿勢に直面する最中での電撃交代だ。実務の司令塔を失った状態で国益を守り切れるのか。今後の妥結内容に加え、交渉プロセスの透明性にも注視したい。


