【韓察日報】 ソウルで開催された多国間安全保障会議「ソウル安全保障対話(SDD)」において、南シナ海の領土紛争をめぐりフィリピンと中国が正面衝突する異例の事態が発生した。チャンネルAなどの報道によると、登壇したフィリピンのギルベルト・テオドロ国防相は、発言の最中に手渡された「中国の立場を主張するメモ」をその場で読み上げ、中国側の強硬姿勢を激しく批判した。
■演壇で手渡された一枚のメモ 一変した会場の緊張感
会議はソウル市内のロッテホテルで開催され、67カ国および国際機関から約1,000人の関係者が参加した。本会議第1セッションのパネリストとして韓国の安圭伯(アン・ギュベク)国防部長官らと共に登壇したテオドロ国防相は、小国の立場から南シナ海の武力衝突を防ぐ現実的な手段や国際規範の順守について発言していた。同氏が東南アジア諸国連合(ASEAN)を通じた生存戦略や主要国との連携強化を論じていたところ、イベント運営スタッフからA4サイズのメモ1枚が手渡された。
MBCは、このメモについて駐韓中国大使館の武官が手書きで作成し、スタッフを介して手渡すよう依頼したものだと報じている。メモを確認したテオドロ国防相は「中国から届いたメモのようだ」と述べて内容を読み上げ始めた。そこには、歴史的権利として「九段線」を主張する中国に対し、2016年に常設仲裁裁判所が「法的根拠がない」と下した判決をめぐり、「裁定は違法かつ無効であり、中国はいかなる主張も容認しない」とする中国側の立場が記されていた。
■「敗訴したのだから当然だ」 国際条約の軽視を一喝
テオドロ国防相はメモを読み上げた直後、「それはあなた方の主張に過ぎない。敗訴したのだから受け入れないのは当然だ」と一喝した。さらに、「自ら署名した国連海洋法条約(UNCLOS)を自ら踏みにじる行為だ」と批判を強め、中国の圧迫はもはや「グレーゾーン」の域を超えた実質的な侵略行為であると断じた。同氏は「中国がいかに切羽詰まっているかを示す記念品としてメモを保管する」とし、メモの差し入れ者に対して「この件で強制収容所(グラーグ)に連行されないことを願う」と皮肉たっぷりのコメントを添えた。
■防衛装備調達の最優先基準は「領土主権の支持」
さらにMBCの単独取材に応じたテオドロ国防相は、セカンド・トーマス礁やスカボロー礁のみならず、フィリピン最北端のバタネス諸島にまで及ぶ中国の拡張主義を強く警戒した。その上で、フィリピン政府が防衛装備の調達を行う際の最優先基準として「フィリピンの領土保全や海洋主権を全面的に支持する国であるか否か」を提示した。フィリピンの権利主張を支持しない国の防衛装備品は導入を考慮しない方針を明かした。現在推進中の次世代多目的戦闘機事業では韓国のKF-21「ボラメ」が候補に挙がっているが、最終選定については言及を避けた。
【編集長の韓察眼】
南シナ海を巡る中比対立が多国間会議の秩序に波及した象徴的な出来事と言える。黄海に中国が無断で大型海上構造物を設置する事態に直面する韓国に対し、比側が領土保全の支持を調達条件に挙げた狙いは対中包囲網の形成にある。KF21売り込みを狙う韓国が、最大の貿易相手国である中国との関係と防衛輸出をどう両立させるかに注視したい。


